教育をめぐるあらゆる問題は深刻を極め、教師も学校も教育委員会も文部科学省も、誰のために何をしなければならないのかを再認識する必要が大いにある。そして何より政治家に課せられている責任は言うまでもなく大きい。
私が委員を務める中教審の「教職員給与の在り方に関するワーキンググループ」では、「良い教員」を給与で処遇する、いわゆるメリハリのある給与体系を構築すること、それによってモチベーションを上げ、良質な教育環境をつくるという目的のために議論を行っている。
教育公務員の給与は、一般行政職に比べて給与ベースで2.76%程度優遇されているといわれているが、いわゆる残業手当の代わりに支給されている「教職調整額」の一律4%支給や、教員の確保が難しかった高度成長時代に作られた「人材確保法」によって新設された定額の「義務教育特別手当」など、教員の能力や勤務実態の差を反映した給与制度にはなっていない。
加えて、学校が教諭と教頭・校長の管理職という「鍋ぶた型組織」によって運営され、機動的な組織体とはいいがたい実態もある。近年、部活動の引き受け手がいないという問題があるが、その背景には、人材確保法によって新設された「部活動手当」が1日4時間程度従事してわずか1200円であり、教員の本務として位置づけられていないという問題がある。
これらを考えると、給与の在り方を考えるにしても、教員の本務、学校の管理運営組織、勤務実態や能力の差を反映させるための評価制度、教員の質向上のための育成方法などがいかにあるべきかなど、必要な議論はあまりに多岐にわたる。学校教育の改革は教員改革であることに尽きるのだから、この際、給与制度についてもある程度の時間をかけ、徹底した議論をすべきだが、ワーキンググループは年明けごろまでに結論を出さなければならない短期決戦の議論を強いられている。
そもそもこの議論は、行政改革推進法第55、56条によって、教職員数の定数と給与を総人件費改革の一環として削減する旨規定され、さらに予算編成方針である「骨太2006」で「教育の質の向上を図り、2010年までに国際学力調査における世界トップレベルの学力を目指す」といいながら、「教職員等人件費を削減する」という矛盾した論理に出発点があるのだ。しかもこの方針を決めた自民党歳出改革プロジェクトチームでは、当面教員給与の優遇分2.76%(額にして1万1323円程度)を5年間で削減していくということまで決めている。
私自身も、優遇分を温存することを良しとしているわけではないが、他の分野と足並みをそろえて削減という枠をあらかじめ作った中での議論は、国家財政全体としては歳出削減を図らないといけないといっても、教育もそれで良しとしている政治の姿勢が疑問でならない。人材確保法の現在における有効性に疑問はあるが、それまでも歳出削減の根拠に利用しようとする財務省の姿勢を、政治はどう考えているのだろうか?
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