最終更新日 2005年10月10日
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「食卓の記憶」70 荒井 広幸氏
(「週刊文春」2005年6月9日号)

『おにぎりがパワーの源』

 自民党には、定例で「朝食会」があって、講師を呼んで話を聞いたり、大臣と論議をしたりするのですが、ここで出される食事は、必ずご飯。一時はパンが出されたこともありましたが、今は、必ず飯で、しかも古米なんです。でも、不思議ですよね。朝同じものを食べても、例えば郵政民営化について、あれだけ意見が違うんですから(笑)。
 それはさておき、私もご飯(お米)好きで、毎日一口は食べないと調子が悪いような気がしてしまうほどです。中でもおにぎりというのは子供のころからなくてはならないものでした。
 父は郵便局員でしたが、私が子供のころは、郵便局の二階に電話交換局があって、母もそこで交換士として働いていました。二人とも“泊まり番”や夜遅くなるときがあるので、そんな時は、四つ違いの妹と二人で、母が作っておいてくれたおにぎりを食べて両親の帰りを持ってたのです。梅干し入りか塩をまぶすか、醤油で焼いたおにぎりというのがほとんど。丸美屋の“のりたま”がまぶしてあったり、海苔が巻いてあるというのはかなりの贅沢品でしたよ。
 運動会の前日、たまたま母が“泊まり番”で、朝家に帰ってから寝ずに作ってあとから持ってきてくれたおにぎりも印象深く記憶に残っています。
 またおにぎりといえばやはり選挙。選挙中の食事は、支援者のご婦人方が作ってくれたおにぎりがほとんどで、選挙カーの中で、それはもう飲み込むように食べています。素朴でも手作りの愛情が一杯。それが感激でおにぎりパワーで頑張れるのです。
 私が最初に選挙に出たのは、二十八歳で出馬した福島議会議員選挙でした。その後、一期で県会議員を辞職し、国政へ挑戦しましたが、あえなく次々々点で落選。そんな結果でも、支援者の方々の待つ選対本部へいって、敗北の弁を述べなければならない。正式な結果を聞いてから、私が選対本部に行くと、既に支援者の方達は、ご婦人方が用意してくれたおにぎりを手に取っていました。しかし、みんな下を向いたまま。私が敗北の弁を述べるとグビグビ・・・・・・ポリポリ・・・・・・。
 シーンとしている選対本部で、おにぎりを飲み込む音とたくわんをかむ音がやけに響くんです。当選した時は、支援者の方々と一緒に大騒ぎしますから、そんな音は聞こえません。でも落選した時は、そのおにぎりとたくわんの音が響くことで、より一層つらさが増してくるように思います。それに落選した時のおにぎりは味がまったくしないんです。
 おにぎりは私にとっては大変重宝な食べ物であり、そして原点。自分のパーティーでも、福島のお米を使ったおにぎりを必ずだします。それが一番人気であっという間に“売り切れ”てしまうんです。
 (取材・構成  細川珠生)


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