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私の伯父・町村敬貴は酪農の草分けといわれた人物で、北海道で「町村牧場」を始めました。今は娘夫婦、つまり私のいとことその息子夫婦が経営を継いでいます。ここのバターや牛乳は、終戦直後の物資が豊かでない時代、あまり美味しいものを食べた記憶がない中で、私の栄養源となっていたのです。
とにかく何にでもバターを使っていたという記憶がありますね。白いご飯にもバターをのせていましたし、お味噌汁にも入れていた。それからバター炒めなどもよくしました。従って、小さいころから、我が家ではパンをよく食べていたんです。パンにはバターを塗るというより、スライスしたものをのせて食べるものと思っていました。
私はずっと東京に住んでいましたから、小学生の頃は、夏休みと冬休みを「町村牧場」で過ごしていました。ここで絞りたての牛乳を一日に七、八回飲むんです。そのせいか、夏休みになると東京の子供は暑くて“夏ヤセ”するのに、私は逆に夏休みのたびに太るので、その差がどんどん開いていって、ついに卒業するころには身長百六十センチ、体重六十キロのやや肥満児になってしましまいました。
今はアイスクリームも商品化されていますが、当時は自家用の分だけ手動の機械を使って作っていました。これが本当に美味しかったんです。口の中に入れた瞬間に、スーッと溶けて無くなってしまうような・・・・・・。甘みとクリームの味だけが残るんですね。これは本当に絶品でした。昔、(駐日米大使の)ライシャワーさんが北海道を訪問した折、町村牧場に立ち寄ってくださって、まだ商品化されていなかったこのアイスクリームを召し上がったのですが、「アメリカでもいまや存在しない古いアメリカのアイスクリームの味がする!」と絶賛してくださったのです。凝固剤など一切使わないで、食べきれる分だけを作っていた、まさにクリームの味だけがするアイスクリーム。
父の仕事(北海道知事)の関係で、子供のころの食卓には、その他にも生鮭やイクラ、じゃがいも、かぼちゃ、とうもろこしなど、北海道の食材がわりと豊富に並んでいました。それこそ、鮭のバター焼きなんて、定番でしたね。また、茹でたてのとうもろこしやじゃがいも、かぼちゃなども、バターと実によく合う。特に朝採ったとうもろこしをすぐに茹でてバターをどさっとのせて食べるなんて、本当に美味しい。そう考えると、東京の人は、収穫してから数日経ったものしか手に入りませんから、美味しいものを食べていないんだなぁって思います。
ところで今は「町村牧場」ののむヨーグルトが私の健康の源。常温で二〜三週間保存できるので、まとめて取り寄せて飲んでいます。
(取材・構成 細川珠生)
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